2015年度に、厚生労働省が発表した医療費の総額は、なんと41兆5000億円。これは過去最高の金額で、この10年間では8兆円も増えています。日本の国家予算が約90兆円なので、医療費は国家予算の約半分にも迫る勢いとなっています。
この41兆円という医療費を単純に国民1人あたりに直すと、年額にして約32万7000円となります。
さらに、年齢を75歳で区切ると、75歳未満の平均では年額医療費が約22万円なのですが、75歳以上になると跳ね上がり、約94万8000円にもなります。年齢を重ねれば、身体のあちこちに不調が出てくるのは当然であり、医療費が増大することも仕方ないと言えるでしょう。
医療というのは慈善事業ではないので、高齢者といえども、医者のお世話になると、当然のことながら料金が発生します。
『日本生活習慣病予防協会』より画像を引用
日本は、国民皆保険という制度によって、1回1回の支払いは少なくて済むのですが、やはり重なると馬鹿に出来ない金額になってしまいます。
そこでこの記事では、結構な支出となってしまう《医療費》を節約するための16の裏ワザを公開していきます。『明日からの家計の節約』として役立てるよう話していくので、ぜひ参考にして頂きたいと思います。
■ 目次
4-2:生活習慣病の場合は大病院を選ぶ
6-2:実家に住むご両親を扶養家族にする
8:おわりに
お薬に関連する支出を抑えて家計を立て直し
お薬に関しての支出というのは、皆さんが思っている以上に大きく、気づかないうちに家計を逼迫していると言えます。
特に、ドラッグストアなどで購入しているお薬というのは、年間でトータルすると結構な出費となっていて、ここを見直せば家計は大きく立て直せるはずです。
そこでまずは、お薬に関しての節約術から話していこうと思います。
①ドラッグストアなどのレシートは保管
医療費控除というものをご存知でしょうか?
家族全員で1年間に支払った医療費が10万円を超えると、確定申告で医療費控除の申告をすれば還付金が発生します。
医療費というのは、なにも病院で支払った料金だけではなく、ドラッグストアで買った風邪薬、さらには病院に行くために使った交通費も計上できます。なので「うちはそんなに医療費使ってないし……」と思っていても、年間トータルすれば意外に10万円を超えているケースは少なくありません。
申告する際には、レシートや領収書は必ず必要となります。
病院やクリニックなどの領収書は当然のことですが、ドラッグストアや薬局の領収書もしっかりと保管しておくようにしましょう。
②薬局へ行く際にはお薬手帳を必ず持っていく
処方箋を持って薬局でお薬を買う場合、お薬代の他に《薬剤服用履歴管理指導料》が発生しています。
これは『薬局が、患者のお薬服用歴やお薬服用状況などを記録して指導を行うことに対する料金』です。お薬手帳を持っていくと、この薬剤服用履歴管理指導料が40円安くなります。
「たったの40円だけかよ」と思う方も多いでしょう。たしかに1回で40円というのは微々たる金額ですが、積み重なれば大きなものです。特に、通院頻度が高い人であれば、年間トータルで見ると結構な額になっているものです。
塵も積もれば山、とも言います。薬局へ行く際にはお薬手帳を必ず持っていくようにしましょう。
③同じ効能で半額のジェネリック薬を選ぶ
みなさんもよくご存知のジェネリック医薬品。
ジェネリック医薬品というのは、別名『後発医薬品』とも言われているもので、新薬(先発医薬品)の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分のお薬のことです。
新薬と比べると、価格は40%~50%ほどになります。
処方されているお薬にジェネリック医薬品がある場合、薬剤師から「ジェネリックにしますか?」と聞いてくるはずです。そんなときは迷わずジェネリックを選ぶようにしましょう。
同じ効能であれば、約半額になるジェネリック医薬品の選択で家計は大きく変わります。
高額療養費制度を利用して家計を立て直し
ガンなど治療に高額な医療費が必要となる場合には、高額療養費制度というものがあります。
これを知る知らないでは、後々の医療費の出費に大きな差が出てくるので、ぜひ覚えて利用していただき、安心して治療に専念できるようにしましょう。
①100万円の治療費でも9万円の自己負担額に
日本では国民皆保険の制度があり、70歳未満の方の治療費の自己負担額は3割となっています。
3割で済む国民皆保険制度は非情に有難いのですが、大病を患って、入院や手術で100万円にものぼる治療を受けた場合には、30万円もの金額を払わなければなりません。こういった場合に利用するべき制度が『高額療養費』なんです。
高額療養費というのは、家計に過度な負担を与えないよう、患者が1ヶ月に自己負担する医療費に上限を設けている制度です。現在の70歳未満の人の限度額は、収入に応じて5段階に分けられたいます。
《表⑴》高額療養費の所得区分と自己負担額(年収は目安)
所得区分 | 自己負担額 | |
1~3ヶ月目 | 4ヶ月目以降 | |
月収83万円以上 (年収1160万円~) |
25万2600円+(総医療費-84万2000円)×1% (例)100万円かかった場合:25万4180円 |
14万100円 |
月収53万円~79万円 (年収770万円~1160万円) |
16万7400円+(総医療費-55万8000円)×1% (例)100万円かかった場合:17万1820円 |
9万3000円 |
月収28万円~50万円 (年収370万円~770万円) |
8万100円+(総医療費-26万7000円)×1% (例)100万円かかった場合:8万7430円 |
4万4400円 |
月収26万円以下 (年収 ~370万円) |
5万7600円 (例)100万円かかった場合:5万7600円 |
4万4400円 |
住民税が非課税 | 3万5400円 (例)100万円かかった場合:3万5400円 |
2万4600円 |
上の表を見てもらうと、たとえば月収が40万円のサラリーマンの場合、
《8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%=8万7430円》となり、自己負担額は9万円でお釣りがくる金額となります。
高額療養費の適用を受けるには、事前に自分が加入している健康保険組合に『限度額適用認定証』を発行してもらって病院の窓口で提示すれば、最初から限度額での治療費でOKとなります。
万が一、この制度を知らずに3割の自己負担額を支払った場合には、健康保険組合に申請することで、超過分の払い戻しを受けることはできるので安心して下さい。
②お薬は3ヶ月分まとめて処方してもらえばお得
高額療養費制度には、過去1年間に高額療養費に該当する月が3回あった場合、4回目からは自己負担額がさらに下がる『多数回該当』という仕組みがあります。
上の表⑴を見てもらえば分かるように、たとえば月収40万円のサラリーマンの場合、4回目以降の自己負担額は4万4400円にまで下がることになります。つまり、この安くなる4回目以降の多数回該当を利用して《3ヶ月処方》で医療費を節約するわけです。
3ヶ月処方を利用した場合としない場合を比べてみましょう。
1ヶ月ごとに処方してもらった場合
- 4万4400円×12ヶ月=53万2800円
3ヶ月に1回まとめて処方してもらった場合
- 4万4400円×4回分=17万7600円
2つの合計から見ると、3ヶ月処方を利用しなかった場合には、
53万2800円-17万7600円=35万5200円
上の計算式の通り、35万5200円も多く支払ってしまうことになります。年間で35万円の差はかなり大きく、家計に与える打撃は計り知れません。
すべてのお薬で3ヶ月処方が出来るわけではないのですが、ガンなどの高額なお薬を服用する場合には、担当医に相談してみることをお勧めします。担当医のOKが出れば、大きく出費を抑えることができるので、ぜひ記憶に留めておいて頂きたいと思います。
③家族全員1ヶ月分の医療費を合算して申請する
『1ヶ月間、同一医療機関に支払った自己負担額が上限を超えた場合』に、高額療養費制度の対象となります。
ですが、大病を患っている場合などを除いて、1人の医療費で限度額に届くようなことは、ほとんど無いことでしょう。しかし、1人では無理でも、家族全員の医療費を合算して限度額を上回ることは有り得ます。この仕組みを《世帯合算》と言います。
世帯合算を申請できる条件は以下の2点です。
- 家族全員が同じ健康保険に加入していること
- 各々の自己負担額が月2万1000円を超えていること
上記の2点を満たしていることが条件となり、単に家族の医療費合算が限度額を超えていれば良い、というわけではないので注意して頂きたいと思います。
ただ、条件を満たしている場合には必ず申請するようにしましょう。世帯合算を申請するしないでは、医療費の支出が大きく変わります。
④支払いをクレジットカードにするとお得
クレジットカードでの支払いが可能な病院の場合には、現金よりもカードで支払う方がポイントが貯まるので断然にお得です。
たとえば、高額療養費の場合に、①で述べた『限度額適用認定証』を使わずに、クレジットカードで3割負担額を支払いポイントを貯めてしまいましょう。
そして、後に高額療養費制度を利用して払い戻しを受ければ、ポイントが貯まった分、家計の足しになるので、賢くクレジットカードを医療費に利用することはお勧めだと言えます。
入院になった場合の病院の選び方で家計を立て直し
もし、何らかの病気や怪我によって入院することになった場合には、看護師の数で病院を選べば支出を抑えることができます。
入院してかかる費用というのは『入院患者に対する看護師の数によって、入院時の医療費に差が生じる』ということをご存知でない方が意外にも多く、余計な出費をしている方が少なくありません。
入院したときの基本料金というのは施設基準で決まっています。
《表⑵》一般病棟入院1日あたりの基本料(3割負担の場合)
施設基準 | 入院基本料 |
入院患者7人:看護師1人 | 4773円 |
入院患者10人:看護師1人 | 3996円 |
入院患者13人:看護師1人 | 3363円 |
入院患者15人:看護師1人 | 2880円 |
上の《表⑵》を見れば分かる通り、一般病棟への入院1日あたりの基本料金は『入院患者7人に対して1人の看護師がつく病院』では4773円、一方で『入院患者15人に対して1人の看護師がつく病院』では2880円です。
この2つを比べると、1日あたり1893円もの差が出ます。仮に10日間入院した場合では2万円弱もの差が生じてしまいます。
重病で手厚いケアが必要なケースの場合は別として、軽症で緊急性のない病気の場合では、施設基準を調べてから入院する病院を決めることで、医療費を節約することに繋がります。
施設基準は、病院の窓口で聞けば分かりますし、ホームページでも載っているので、入院先を決める前に調べておくことが大切だと言えるでしょう。
大病院で受診する際のシステムを知ることで家計を立て直し
大病院は、設備も整っていて、医師や看護師の数も多く、いざという場合には頼らざるを得ないと言えます。
しかし、大学病院や国立病院などの、入院用のベッドが500床以上ある大病院に飛び込みで受診した場合には、特別料金を取られてしまいます。これを避ける方法を知っておくことで、無駄な出費を抑えることができます。
①『選定療養費』という特別料金を避ける方法
この選定療養費というのは、大病院だけが加算する特別な料金となっています。
- 初診時:5000円以上
- 再診時:2500円以上
この特別料金は、具体的に金額が決まっているわけではなく、各病院の裁量に委ねられているので、はっきりとした金額は分からないのです。さらに健康保険が適用されないので、全額自己負担になってしまいます。
ただ、選定療養費という特別料金は医師の紹介状があれば払う必要がなくなります。
普段から、かかりつけのクリニックや中小病院を見つけておくことは、家計を立て直すためには大切なことだと言えるでしょう。
②生活習慣病の場合は大病院を選ぶ
糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病で通院する場合は、2ヶ月目から特定疾患療養管理料という特別料金が発生します。
《表⑶》医療機関別の特定疾患療養管理料
医療機関の種類 | 1回毎の料金 |
クリニック | 680円/回 |
ベッド数100床未満の病院 | 440円/回 |
ベッド数101~200床未満の病院 | 260円/回 |
ベッド数200床以上の病院 | なし |
クリニックからベッド数200床未満の病院までは、特定疾患療養管理料が必要となるのですが、ベッド数200床以上の大きな病院では、この特別料金が発生しません。
もし、生活習慣病を患ってしまった場合には、かかりつけのクリニックや中小病院で紹介状を書いてもらいましょう。生活習慣病は大病院で受診する方が、医療費の節約へと繋がります。
初診料・再診療・時間外料金を知ることで家計を立て直し
初診料と再診療は、医療機関を受診すれば必ず発生する料金です。時間外は文字通り、診察時間外に受診すると加算される料金です。
これらの料金を知ることで、医療費を節約するテクニックもあるので、その辺りを話していきたいと思います。
①同じ病院で複数科を受診する場合には1日で済ませる
初診料と再診療の料金は、以下のようになっています(診療所と病床数200以下の病院)。
- 初診料:850円
- 再診療:220円
初診料というのは、文字通り初めて受診したときに発生する料金です。再診療というのは、同じ症状診を2回目以降も同じ病院で受診した際に発生する料金のことを言います。
ただし、同日に同じ病院内で受診すれば、2科目は初診料と再診療が半額になります。さらに3科目以降では、何科目受診しても初診料と再診療は無料になります。これを1日で済まさずに、今日は○○科、次の日に○○科といった具合で受診すると、その都度で初診料が発生するので、かなり無駄な出費となっていまいます。
もし、同じ病院で複数の診療科を受診する場合には、1日で済ませた方が支払う医療費が安くなるので、少々面倒で時間もかかりますが、できる限り1日で済ませるようにしましょう。
②時間外の受診は出来る限り避けるよう心がける
その病院があらかじめ定めている診察時間内で受診すれば問題はないのですが、診察時間外で受診した場合、初診料や再診療に加えて特別料金が発生します。
《表⑷》時間外別の加算料金
時間外区分 | 加算料金 |
休日 | 750円 |
時間外 | 260円 |
深夜(22時~6時) | 1440円 |
わざわざ診察時間外に受診して、余分な料金を払うことは、余計な出費を増やしてしまうことに繋がってしまいます。
「夜間は混んでないから」といった理由から、わざわざ深夜などに受診する人もいるようですが、時間外診察というのは本来『救急で命に危険がある人』のために設けられている病院側の対応です。料金面だけではなく、道義的に見ても出来る限り避けるべきだと言えるでしょう。
もちろん、緊急時には加算など気にせずにどんな時間であろうと受診すべきなのですが、症状が小康状態であれば、通常の診察時間が始まるまで待つという対応が、家計にとっても得策となります。
健康保険料を上げないテクニックで家計を立て直し
みなさんが毎月支払っている健康保険料。
この健康保険料の支払額を出来る限り上げないようにするテクニックがあります。劇的な節約には繋がりませんが、積み重なると結構な額になるので、出来ることならぜひ活用して頂きたいと思います。
①毎年4月~6月の残業を控えれば保険料の節約になる
毎月のお給料から天引きされている健康保険料ですが、これは4月~6月の給与の平均によって決められます。この金額は9月~翌年の8月まで適用されることになるんです。
この制度によって決められる金額は標準報酬月額と呼ばれているもので、基本給・家族手当・住宅手当などに加えて、残業代も含まれています。
なので、4月~6月の残業を抑えて平均給与を低くすることで、必然的に健康保険料も安くなります。
②実家に住むご両親を扶養家族にする
扶養家族として健康保険に加入できるのは、同居する3親等内の家族だけなのですが、一定の条件を満たしていれば、離れて暮らしているご両親を扶養家族に入れることができます。
離れて暮らすご両親を扶養家族に入れる条件
- 親の年齢が60歳未満で年収が130万円未満
- 親の年齢は60歳~74歳で年収が180万円未満で、その金額が子供の仕送りよりも少ない
上記の条件のどちらかを満たしていれば、離れて暮らしているご両親を扶養家族に入れることが出来ます。扶養家族に入れば保険料の負担なしに健康保険に加入でき、さらに前述の『世帯合算』の対象にもなります。
国や自治体の助成を利用して家計を立て直し
患っている疾病によっては、国や自治体からの助成を受けることができます。
厚生労働省のホームページや、各都道府県の保健所などに問い合わせれば、詳しい内容を知ることができるので、該当する方はぜひ利用するようにしましょう。
①特定の難病に対しては国や自治体による助成がある
ベーチェット病や先天性横隔膜ヘルニア、潰瘍性大腸園などは、医療費の自己負担分の一部を国と自治体が助成してくれます。
これは、国が費用を助成しないと、治療法の研究が進まないと判断された難病に対して施行される特定疾患治療研究事業として助成される制度です。現在では、306疾患がこの特定疾患として認められています。
具体的な疾患名は、厚生労働省のホームページで該当する全病名が公表されているので、確認して頂きたいと思います。
②月額1万円の自己負担で治療できる高額長期疾病
人工透析を受けている慢性腎不全・血友病・HIVの患者は、高額長期疾病(特定疾患)の対象になります。
現在、加入している健康保険で特定疾病療養受療証を発行してもらうと、月額1万円の自己負担で治療を受けることができます。ただ、70歳未満で月収53万円以上ある人の場合は、自己負担額が月額2万円になります。
しかし、一般的な治療費に比べると、患者が負担する額は大きく抑えることができるので、こちらもいざという時のために、記憶の片隅にでも置いて頂きたいと思います。
おわりに
今回紹介した『医療費節約16のテクニック』は、どれも家計を立て直すための手段として有効的だと言えます。
ですが、実践するには少々面倒なことも多いので、最初は取り組んでみても長く続けることができる人は、あまりいないと思います。しかし出来る限り長く取り組んで頂きたいと思います。
領収書を保管したり、ジェネリック医薬品を選ぶなど、様々な医療費節約のテクニックがあるのですが、一番の節約テクニックは病気にならない身体を作ることです。
《規則正しい生活習慣を送る》《バランスの取れた食生活を心がける》といった感じで、病気に負けない身体作りをすることが、最も医療費の節約に繋がると言えるでしょう。
『不摂生をしないこと』これが究極の医療費節約術となります。
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